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「君を想う」
2006-04-24 Mon 23:00
君と過ごしたあの夏。
小さな小さな隠れ家だけが、僕らの世界そのものだったあの夏。
 
僕はまだ笑えるくらい少年で、どうしようもなく自分勝手で自由だった。
そして君は、驚くほど大人で思いやりがあり、そして寂しがり屋だった。

何度も笑って、何度も泣いて、君はきっとそのどちらのせいかも分からないくらい疲れ果てて、ある日僕の前から姿を消した。

呆れるほど後悔もしたし、罵倒もしたし、恋しくなったけど、僕には君を探す手段も気力も何一つなかったから、クールに気取った振りをしながら“諦めた振り”もしなければいけなくなった。

結構辛い状況だったけど,友達の手前「彼女に逃げられた惨めな男」にだけはなりたくなかったから、合コンもしたし、一夜限りの大人の付き合いなんかもたくさんした。

その度に、僕は君の温もりを本当に愛おしく思い出すことが出来たから。

どんなに可愛い女の子だって、どんなにスタイルの良い女の子だって、君が与えてくれる無限とも思える温もりと比べると、まるで手応えのない空虚の様に感じてしまう。

君の温もりを思い出す為に、僕は今日も“誰か”を抱く。
君の寝顔や、君の吐息や、君の微笑みを思い浮かべながら――



そんな日々が何年か続いた。
時には数ヶ月続く付き合いもあったが、決まって彼女達は「あなたが何考えてるかもう分からない」という捨て台詞と共に去っていく。

僕は追うこともしないし、もともと付き合おうなんて言ったこともないから、そこできれいさっぱり二人は終わる。
僕にとっては始まってもいなかったけど、そこで、終わる。

ドラマや映画で良く観る様に、僕も街で偶然彼女に再会しないかと少しは期待していたかもしれない。

だけど、そんな運命的な再会が現実世界ではめったに無いことにようやく気が付き、今は彼女の後姿に良く似た女の子が目の前を横切っても、怪しまれない程度に後をつけながら顔を確認することもしなくなった。

そしてまた月日は過ぎて行く。

彼女は写真が嫌いだった。
だから二人で映っている写真は一枚も無い。
そのことがとても残念でならない。

「これからもずっと一緒なんだから、写真なんて必要ないじゃない」
その時は僕もそう信じていたから。

僕は彼女の儚げな横顔が好きだった。
長いまつ毛が好きだった。
すこしぽっちゃりした唇が好きだった。

けれど月日が流れてゆくにつれ、僕は彼女の顔を上手に思い出せなくなっていた。

もっとあごは細かった気がする。
眉毛は薄かったのではないか。
えくぼはあっただろうか。

僕の記憶はどんどん曖昧になっていき、本当に彼女が存在していたのかさえも疑わしく思えてくる。

そう。
君を失ってから、僕はあまりにも長い時間を過ごしすぎたんだ。
二人で過ごした時間以上に、君の居ない時間を過ごしてしまったから。

僕等が笑い合っていたあの時間はきっとこんな風に、少しずつ、少しずつ、風化していくんだろうね・・・


そしてまた2年。

僕は先月結婚し、小さいが新居を持つことも出来た。
ちゃんと僕から交際を申し込んだし、プロポーズもした。
彼女を守りたいと思ったし、とても愛おしく思った。
彼女の温もりの中に、やっと居場所を見つけることが出来たんだ。

君とはあれから一度も再会を果たせないままだったね。
でも、きっとそれで良かったんだ。
もし君と会ってしまっていたら、僕はまた君を狂おしいくらい求めてしまったし、君はまた疲れ果ててしまっただろうから。

でも、ひとつ笑い話をしてもいいかい?
顔も声も、もう何もかも思い出せない今になっても、僕はあの夏が来る度に“君”を思い出してしまうんだ。

姿も声もぼやけてしまった今でも尚、君という存在と思い出達が鮮やかに蘇る。

こうして僕は一生、夏が来る度に君を想う。
来年も、再来年も、10年後も。

きっと僕は、君を想う―――


<END>


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初めまして
初めまして。紅と申します。
私もブログで、小説や詩を書いております。
まだまだ未熟者で、管理人様のような小説を書いたりする事が出来ていません(苦笑)
たまに見に来させて頂きます(勝手ですみません)
では、失礼致します。
2006-05-16 Tue 16:38 | URL | 紅 #-[ 内容変更] | top↑
 
 
 
 
 
 
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