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小説☆「じいちゃんとけん玉」
2006-04-09 Sun 23:49
「じいちゃんとけん玉」  【最終話】 

(1から順にどうぞ)
ランドセルにもさすがに飽き、何やらごちゃごちゃとした格好をしたよく分からない名前が書かれたカードゲームに夢中になっていた幸太がふと顔を上げ、父さんを見た。

「幸太、ほらけん玉だ。知ってるか?けん玉。」

幸太は僕のほうをチラリと見てから「ん~?」と複雑な表情をしながら首を傾ける。
僕は一度もそのおもちゃ箱の中からけん玉を取り出したこともないし、ましてや幸太が、古臭くボロボロになったおもちゃだけが無造作に放り込まれたこの箱に興味を示したことなどないだろう。

初めて見るその滑稽ともとれる未知なる物体に、しばし幸太の視線は釘付けになった。

「こんなところに・・・・」
そう、つぶやいたつもりだったが、それはかすれて言葉ともとれない呻き声となってか細く発せられただけだった。
 
考えてみれば、夫婦だけで暮らしていたじいちゃん達の家に、そのままこのけん玉を置いておくのは不自然なのかもしれない。
自然な流れで、当時まだ子供だった僕の家のおもちゃ箱へと移動するのは当たり前だったのだろう。

だけど、僕はじいちゃんがけん玉を一緒に持っていったと思いたかった。
肌身離さず彼の体の一部として、僕の記憶の中にそう存在し続けて欲しかったのだ。

カンッ カンッ カンッ

じいちゃんが居なくなってから今まで、この丸みのある澄んだ音色を聞く機会などまったくなかった。

カンッ コンッ

赤い玉が、上へ下へと不規則な感覚で行き交う向こう側で、幸太の輝く瞳と出会った。
彼の目はその赤い球体に釘付けになり、それを操る“おじいちゃん”の存在が、今急速に“実はすげぇおじいちゃん”に昇格しているのが手をとる様に伝わってくる。
かつて僕にとっての“ヒーロー”が存在したように――

「・・・あなた?」
沙織の心配げな小さな声が右側から聞こえた。
どうしたのだろう。
まるでそれが自然の摂理だとでも言うかのように、僕の右目からは静かに果てることない想いが溢れ出していた。

なあ、じいちゃん。
僕は一生懸命、あなたの死を否定して、無理やり止めたままの思い出だけを大切にしようとしてきたんだ。
だけどほら。
時間はこうして確実に流れ続けて、また新たな“ヒーロー”が今誕生したよ。
いままでずっと引き留めてごめんな。
もう僕は大丈夫だよ。未来もそんなに悪くないって、今改めて分かったから。

じいちゃん、もう自由に向こうの世界に行ってくれ。
僕はもう、大丈夫――


微笑みながら涙を流し続ける僕をしばらく見守っていた沙織は、何も言わずにただ側で寄り添いながら、父さんと幸太の姿を見つめてくれた。

「俺もけん玉・・・練習しないとな」
ボソッとつぶやいた僕の言葉にも、彼女は微笑みながら
「そうね」
と一言、返してくれた。

僕らは未来へ向かって、今日も歩き続けている。
僕もきっと、“ヒーロー”になる日がやってくるだろう―――

「まだまだ若いモンには負けてられん、なぁ。謙太」

<終わり>


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